書籍目録

『ケンペルとツンベルクの日本への旅』(若者のための旅行記に関する地誌的教育叢書)

カンペ / [ブレトン](叢書編者) / (ケンペル) / (ツンベルク)

『ケンペルとツンベルクの日本への旅』(若者のための旅行記に関する地誌的教育叢書)

ほか1作品と合冊 1806年 パリ刊

Campe, Joachim Heinrich / [Breton, M. Jean Baptiste Joseph] (Seried ed.) / (Kaempfer, Engelbert) / (Thunberg, Carl Peter).

VOYAGES AU JAPON, Par KEMPFER et THUNBERG; Faisant partie séparée de la Bibliothèque Géographique et Instructive des Jeunes Gens par CAMPE.

Paris, J. E. Gabriel Dufour, 1806. <AB202090>

Sold

12mo (8.0 cm x 13.3 cm), 2 works bound in 1 vol. Front., Title., pp.[1], 2-199, another work bound together, Later half cloth on marble boards.

Information

青少年向けの旅行叢書に収録されたツンベルクとケンペルによる日本

 本書は、「若者のための興味深い旅行記についての地誌的教育叢書」と題された叢書の第4期第10巻として刊行されたもので、タイトルにあるようにケンペル(Kaempfer, Engelbert, 1651 - 1716)の『日本誌(The History of Japan, 1727)』と、ツンベルク(Carl Peter Thunberg, 1743 - 1828)の『旅行記(Resa uti Europa, Africa, Asia, förrättad åren 1770-1779)』をリソースにして、日本についての情報をまとめたものです。

 この叢書の編者であるカンペ(Campe, Joachim Heinrich, 1746 - 1818)は、ドイツの著述家でロック哲学の翻訳をはじめとした哲学書や、数多くの教育書を著しており、本書は後者に分類されるものの一つです。また、叢書の編者であるブルトン(Jean-Baptiste Joseph Breton de la Martinière, 1777 - 1852)は、ジャーナリストとして多くの論説や旅行記や紀行文の編纂をしており、『日本(Le Japon. 1818)』の著作でも知られています。叢書自体は全68巻で構成される非常に大部のもので、当時入手しうる限りの世界各地への航海記、旅行記を平易な文体で初学者にも理解できるよう一つの叢書にまとめげています。

 全7章からなる本書は、ケンペルとツンベルクの著作をそのまま引用するのではなく、構成に応じて編者によってまとめ直されており、カンペによる独自の作品として著されています。第1章と第2章は、オランダの長崎到着と、オランダ商館員による江戸参府についてで、長崎(Nangasaki)を出発して、大坂(Osacka)、京都(都、Méaco)を経て江戸(Jedo)に至るまでの行程を説明しています。第3章では、江戸での将軍との謁見や、商館員に課せられる儀式、しきたり等が説明され、第4章は、江戸から長崎までの帰路が中心に扱われています。ケンペルやツンベルクの著作と同様に、行程において立ち寄る各都市の様子や、関連する人々の文化や風習、政治制度などが随所に挿入されているのが特徴です。第5章では、日本に住む人々の外観や衣装住む人々の外観や衣装、習慣、言語、芸術、文学、道徳観など生活に関係する諸分野が扱われています。第6章は、日本の都市についての概論で建築物の荘厳さなどが説明され、またこの章の後半ではポルトガルが日本を追われ、オランダがその地位を確立した経緯についても論じられています。最後の第7章は、日本の宗教文化を扱っており、礼拝の仕方や、寺院の様子、婚姻と葬儀のあり方などを論じています。具体的な各章のタイトルを挙げますと下記の通りになります。

第1章:オランダの日本に向けての航海と長崎(Nangasaki)到着。日本における外国人入国がきわめて厳格に規制されていること。(江戸参府途上の)大坂までの日本国内の行程

第2章:大坂(Osacka)についての記述。この帝国の古代における首都であった京(Meaco)への到着と街についての記述。現在の首都である江戸の記述。

第3章:皇帝との謁見とオランダが服さねばならない屈辱的な儀式。オランダ商館が献上する品々と皇帝から下賜される品々について。

第4章:江戸参府の帰路。長崎港の記述。この帝国の地理的概観。日本の人々の起源。日本における様々な国々について。宗教上と世俗上の皇帝と後者による前者の簒奪について。刑罰制度について。

第5章:日本の人々について;その外観、衣服、習慣、言語、舞台、文学、音楽など。名誉を著しく重んじる日本の人々の考え方と、彼らが影響を受けている英雄主義について。

第6章:日本における諸都市の概説。建築物の内部と外観について。漆塗りの優雅さと巧みに作られた家具について。ポルトガル人が日本で不興を買った原因とオランダが反映した理由について。

第7章:日本の様々な宗教について。支配的な教団とその司祭や寺院について。日本の結婚式と葬儀について

 
 このように実に多彩なトピックについて日本のことが紹介されていて、ケンペルとツンベルクによりながらもカンペが独自の編纂を施すことで、新しい日本論として通読できる内容となっています。本書は、壮大な叢書の1巻として刊行されたこともあってかこれまでほとんど注目されてこなかったものと思われますが、18世紀初頭のフランス語圏における日本についての平均的な知識の様態を理解する上では、大変有用かつ、重要な文献と言えるものと思われます。

口絵はケンペルでもツンベルクの著作からでもなく、より古いモンタヌスの作品に収録されている図版に範をとったようである。
タイトルページ。
第1章:オランダの日本に向けての航海と長崎(Nangasaki)到着。日本における外国人入国がきわめて厳格に規制されていること。(江戸参府途上の)大坂までの日本国内の行程。
第2章:大坂(Osacka)についての記述。この帝国の古代における首都であった京(Meaco)への到着と街についての記述。現在の首都である江戸の記述。
第3章:皇帝との謁見とオランダが服さねばならない屈辱的な儀式。オランダ商館が献上する品々と皇帝から下賜される品々について。
第4章:江戸参府の帰路。長崎港の記述。この帝国の地理的概観。日本の人々の起源。日本における様々な国々について。宗教上と世俗上の皇帝と後者による前者の簒奪について。刑罰制度について。
第5章:日本の人々について;その外観、衣服、習慣、言語、舞台、文学、音楽など。名誉を著しく重んじる日本の人々の考え方と、彼らが影響を受けている英雄主義について。
第6章:日本における諸都市の概説。建築物の内部と外観について。漆塗りの優雅さと巧みに作られた家具について。ポルトガル人が日本で不興を買った原因とオランダが反映した理由について。
第7章:日本の様々な宗教について。支配的な教団とその司祭や寺院について。日本の結婚式と葬儀について
末尾に目次が掲載されている。
同じ叢書の別著作(日本とは無関係)と1冊に合冊されている。文庫本大のハンディサイズで持ち運びも容易な書物。