書籍目録

『日本に関する様々な覚書』

レミー

『日本に関する様々な覚書』

1884年 パリ刊

Remy, Ch(arles).

NOTES ET MÉMOIRES VARIES SUR LE JAPON.

Paris, Imprimerie Balitout, 1884. <AB20211686>

¥55,000

8vo (14.5 cm x 22.5 cm), pp.[1(Half Title.)-3(Title.)-5], 6-138, Original yellow paper wrappers.
製本の綴じ紐が外れかけている状態。表紙の端部分に破れあり。旧蔵機関によるシールの貼り付け、タイトルページ等への空押しあり。 [NCID: BA43600626]

Information

フランス人医師によるユニークな視点からの明治前半期の日本論

 本書はレミー(Charles Rémy, 1851 - 1918)による日本論集で、1884年にパリで刊行されています。著者レミーについての詳しい経歴は不明ですが、おそらくお雇い外国人などの形で明治期の日本に滞在していた医学研究者であったようです。本書にはレミーが学術雑誌に寄稿していた論考や、新たに書き下ろした小論など下記の12作品を収録されています。

1. 「日本の改革における医学の役割」
主に江戸時代における医学、薬学に関する蘭学者の業績とその時代背景、オランダ人との関係を論じています。また、幕末にから明治にかけての変遷も射程に入れて論じており、日本の教育、研究体制の急激な変化とフランスとの関係についても述べています。

2. 「日本における自然科学の研究」
明治以降の日本の急速な教育、研究体制の変遷と西洋医学を中心とした自然科学の導入について論じています。江戸時代の藩校や幕府による学問所から、明治以降の大学制度において、研究や教員、学生のカリキュラムなどがどのように変化していっているのか、従来の日本における主流であった中国や朝鮮の学問と西洋科学との関係等について、医学、薬学分野を中心にして論じています。

3. 「日本における有毒魚について」
「河豚(fougou)」を中心とした日本近海で獲ることができる有毒魚の種類とその毒性の特徴について論じています。また、毒性を持つ可能性がある魚類について、鯰(Namadzu)や、ゴンズイ(Gon-zui)、鮪(Maguro)、鯖(Saba)など数多くの魚類が挙げられています。

4. 「鍼灸について」
西洋で比較的早くから知られていた日本と中国に特有の医療としての鍼灸について簡単に論じたものです。

5. 「温浴について」
日本で広く見られる入浴文化について、その文化的側面と身体への効能といった医学的観点の双方から論じたもの。

6. 「(日本の)座る方法について」
西洋とは異なり屋内で椅子などを用いず、床(畳)に直接座る日本の文化とその独特の座り方、また脚気(bériberi ou kakké)との関係などを論じています。

7. 「(日本の)履き物と歩き方について」
西洋で一般的に見られる革靴があまり用いられない日本の人々の間で用いられている履き物について、木製の履き物(下駄 Des sandales de bois à patins, ou guetta)と藁製の履き物(草履 Des sandales en paille ou waradji)とに分けてその特徴と歩き方について論じています。

8. 「(日本における)輸送手段とその運び手について」
明治になって急速に変化した日本の国内における輸送手段のあり方と、交通網について論じています。

9. 「東京における住居とその特徴について」
台風や地震といった自然災害が絶えず襲ってくる東京における都市整備や住居の特徴、歴史的変遷などを論じています。

10. 「(日本の)病院について」
明治以降に整備された日本の病院の一覧とその特徴について論じています。

11. 「東京における水について」
水資源に恵まれた日本において、東京で用いられている水にどのような特徴があるのかについて、その含有成分を水源ごとに整理して分析と考察を加えています。

12. 「日本の食資源について」
日本のおける農産物の種類やそれぞれの特徴などを論じつつ、そこから作られる寿司(Sushi)などの食品の栄養価などを考察しています。

 本書は明治前半期に来日した外国人による著作としては、著者が医学研究者であったことも影響してかなりユニークな視点からの日本論になっているということができます。ただ、それほど著名でなかったせいか、これまで日本国内外で紹介された形跡がほとんどないようです。